「私を、買ってください」
目の前に立っている少女が、そう言って俺の顔を見た。
右目には、何故か眼帯をしている。
黒色の、眼帯。
それに、目が行っていた。
「お願いです。私を、買ってください」
少女はまたそう言った。
俺は、眼帯から少女の顔へと焦点を合わせた。
どことなく、あどけなさが残る顔。
肌を大きく露出させて、懸命に男を誘おうとしている姿は
まるきりその顔にそぐわなかった。
きっと、10代だろう。
それほど経験もないに違いない。
「お願いです・・・」
少女の口元が、震えていた。
寒いのかもしれない。
11月の寒空の中でそんな服を着て立っていれば、当然のように体は冷える。
何も知らないんだな。
そう思って、ふと、口先で笑った。
普通は、コートやストールなどを肩にかけているものだ。
それも、艶やかな、客の目を惹きつけるような色合いのものを。
こんな、ドレス一枚の薄っぺらな格好で立っていることは無い。
「私を、買ってください・・・」
機械的に繰り返す言葉。
ずっとそう言い続けているんだろう。
けれど、無理だ。
こんな普通の場所で誘っては、見向きもされない。